渉外婚姻関連

日本の非嫡出子(婚外子)に関する法令について

 「非嫡出子」(婚外子)とは婚姻関係にない男女から生まれた子なので、父からの認知がなされていることを前提としますが,男女の国籍が異なる場合、認知についても国際私法上の問題が生じます。

 理解しやすいように、日本人男性A(既婚で子供あり、妻をBとする)が中国人女性(C)との間で子(X)ができた場合について検討します。

 

(一) 日本の民法における「非嫡出子」(婚外子)の法的地位

@  「非嫡出子」とは,婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいいます。

A  非嫡出子には,嫡出子と比較して次のような特徴があります。

  ※嫡出子は母の夫が父であると推定されるが(民法772条),非嫡出子は父の認知によって父子関係が成立する(民法779条)。

  ※嫡出子は父母の氏を称するが(民法790条1項),非嫡出子は母の氏を称する(同条2項)。

  ※嫡出子の親権は父母が共同で行うが(民法818条),非嫡出子の親権は母が単独で行う。ただし父が認知し父母の協議によって父を親権者と定めることができる(民法819条4項)。

  ※非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1である(民法900条4号)。 

B  非嫡出子であっても,養育費の請求については,嫡出子と差別なく請求できます。

C  国籍については,日本法上は,子が出生により日本国籍を取得するのは次の3つの場合です(国籍法2条)。

  ※出生の時に父又は母が日本国民であるとき

  ※出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき

  ※日本で生まれ,父母がともに不明のとき,又は無国籍のとき

D  設例の場合,日本法上,AC間の子XはAからの認知によってはじめてAとの間で父子関係が認められますが,母であるCの氏を称することとなります。 また,AC間の子Xの親権は母であるCが単独で行い,Aが死亡した場合のAC間の子Xの相続分は,嫡出子であるAB間の子の2分の1となります。

 XからAに対する養育費の請求については,AB間の子と同様に認められます。

 国籍については,Xの出生の時点でXがAから認知(胎児認知)を受けていれば,Xは出生により日本国籍を取得しますが,XがAから胎児認知を受けていなければ,ACが正式に婚姻し,かつAからの認知がなされれば,法務局で「準正」の手続を取ることによって日本国籍を取得できます。

 

(二)準拠法

 AC間の子Xは,父Aが日本人,母Cが中国人であるため,Xの中国国内における法的地位は,中国国内における国際私法に従って決定されます。

 また,Xの日本における法的地位は,日本の国際私法(法の適用に関する通則法(以下,「通則法」という))に従って決定されます。

  通則法29条は,1項で,嫡出でない子の親子関係の成立は、父との間の親子関係については子の出生の当時における父の本国法により、母との間の親子関係についてはその当時における母の本国法による。

 この場合において、子の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件をも備えなければならない,とし,同条2項は,子の認知は、前項前段の規定により適用すべき法によるほか、認知の当時における認知する者又は子の本国法による。この場合において、認知する者の本国法によるときは、同項後段の規定を準用する,としています。

 つまり,父子関係(AとXとの関係)については,

@ Xの出生時における父Aの本国法(通則法29条1項)である日本法

A 認知時における父Aの本国法である日本法

B 認知時における子の本国法(同条2項) のいずれかにより子が非嫡出子と認められる場合には非嫡出父子関係が成立することとなります。

 

 いずれにしても,日本の裁判所においては日本の国際私法(通則法)に従って準拠法が決せられ,中国の裁判所においては中国の国際私法に従って準拠法が決せられるため,非嫡出子をめぐる法律関係がどのようになるかは,いかなる法律関係につきどこの裁判所において判断するかによることになるという非常に複雑な問題をはらんでいるといえます。

 

弁護士法人 池田崇志法律事務所

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  中国での非嫡出子(婚外子)の法律上の地位について

  中国と日本の非嫡出子(婚外子)に関する法令の比較

 

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